モーター



ヤマト発動機株式会社製 331型

種類:水冷2サイクルガソリン機関 形式:縦型直列2気筒
吸気方式:リードバルブ 始動方式:ロープスタート
点火方式:フライホイル・トランジスタマグネト
気化器型式:ヤマトYC2836-1 燃料容量:2.3L ギヤ比:14:15
燃料:ガソリン/オイル混合(混合比=40:1)
内径×行程:66mm×58mm 総排気量:396.9cc 圧縮比:8.3
最大出力:22.8kW(31ps)/6600rpm 最大トルク:35.8N・m/6000rpm
最大回転数:7000rpm
全長:575mm 全幅:315mm 全高:979mm 重量:42.0kg

300型シリーズには他に減音型の301型標準型の302型、やまと学校用の303型、電波障害対策型(唐津用)の304型がありましたが、現在は301型を改良した321型または出力低減型であるこの331型で、2015年をもって全場331型に統一されました。
減音型の出力が小さいといわれるのは、吸気経路・排気経路とも長くなるためで、数値としては変わりありません。(最大トルクや性能曲線も同じです。)
そしてこの出力低減型はエギゾーストパイプ径の縮小とシリンダヘッドの燃焼室容積の拡大が行われています。
電波障害対策型は、抵抗入りプラグコード(他は抵抗なし)で、シリンダヘッドと点火プラグが専用の物になっていました。

性能差をなくすため、ボートともども1年間で廃棄されますが、一部は広島支部選手の練習用としてさらに1年間使用します。
宮島では毎年10月頃にボートと同時に入れ替えます。
(他場のボート・モーターの入れ替え時期については
こちら

モーターの全体写真はこちら カットモデルはこちら
下の写真と比べてみましょう!

 

※ ヤマト331型と321型の外観上の違いはほとんどないため、主にヤマト321型の写真を使用しています。


電気一式

モーターの一番上の部分を裏返したところで、これが発電・点火装置一式です。

トランジスタユニットを取り付けたステータベースに、コイルが中に入れられているかたちです。

点火時期の調整、モーターの停止は右の棒(タイマハンドル)を持って回すことで行います。

上の2本のコード(プラグコード)は点火プラグにつながります。













321型用キャブレタ

ヤマト発動機製(形式YC2836-1)です。

普段はカバー(吸気サイレンサ)を取り付けているので見えませんが、モーターの前端に付いています。

エアファンネル、スロットルバルブ、フロート室などで構成されています。
エアファンネルは301型のアルミ製から樹脂製に変わりました。

この奥にインレットマニホールドが付き、リードバルブがあり、クランクケースへとつながるわけです。

中央の円形の部分から外気を取り入れ、棒状のノズルから出る燃料と混合します。
その下部のダイヤル(メタリングニードル)を回すことで空燃比を変化させます。
レース中にモーターに手を伸ばしているのは、これを操作しているのです。



減音型(301型)用キャブレタ

吸気サイレンサの消音室の穴にはめるため、標準型とはエアファンネル(キャブレタ先端)の形状が異なっています。






標準型(302型)用キャブレタ

減音型用とはエアファンネルの形状が異なっています。

以前は自動車用で有名なミクニ製(型式BV-36)でした。
(上写真はヤマト発動機製)



ピストン

上側の2本の溝にピストンリングを取り付けます。つまり、ピストンリングは1機につき4本あるのです。

上面に矢印がありますが、この方向(つまり手前)が上になります。




ピストンリング

メッキされたものとそうでないものの2種があります。(メッキのほうが堅く、すり減りにくいが、アタリがつくまでに時間がかかる)

専用工具で広げながらピストンに取り付けます。



シリンダケース

この中にピストンが収まるわけです。

手前がモーター後部側で、シリンダヘッドが取り付けられます。左側にはエギゾーストフランジが取り付けられます。



クランクシャフト

実際にはコンロッド(コネクティングロッド)も組み込まれた状態で、これごと交換します。

クランクケースの中に収まっています。



ギヤケース

モーターの最下部全部です。

手前のプロペラシャフトにプロペラが付くわけです。

下のフィン状の部分はスケグと呼びます。



リードバルブ

キャブレタ(正確にはインレットマニホールド)とクランクケースの間に付きます。

右手前がリードバルブで、奥がシールドプレートで、左のようにバルブプレートにこの2つを取り付けます。



点火プラグ(スパークプラグ)

現在は全てNGK製で、数種類あります。









安定板

荒天時に装着するアルミ製の板で、
長さ×幅が415×160mm・442×200mm・455×170mmの3種類製造されており、宮島では一番小さな415×160mmのものを使用しています。

取り付け方は下欄を参照してください。



安定板取り付け前

写真は下段が後方に10mm長い、ロングキャビテーションプレート仕様のモーターです。(江戸川を除く全場共通)



安定板取り付け後

このようにモーター下部のキャビテーションプレート(上下2段のうちの上段)に被せるようなかたちで取り付けます。



温水パイプ取り付け前

通常、冷却水は右のエギゾーストフランジからそのまま排出されます。





温水パイプ取り付け後

冬季の温水パイプ取り付け時は、一部の冷却水がいったんキャブレタ内部を通って、凍結防止のためにキャブレタを暖めた後、排出されています。



回転計 RT-1

現在は使われていない回転計です。

モーター調整のために使うもので、レース中は取り付けていません。



回転計 RT-1

RT-1では回転数の検出は、本体に接続されたアンテナで行っていました。





回転計 YT-10

上のRT-1の後継の回転計で、現在使用されているのはこちらです。

表示パネルが大きくなり、検出方式が変更されました。(右写真参照)



回転計 YT-10

回転数の検出は、本体に接続されたコードを、クリップによりプラグコードに接続して行っています。





チルトアジャスタ

ボートの外側、スターンブラケット下部に取り付けられています。

左の5角形のものがそれで、これを回転させることで奥に見えるシャフト(ブラケットボルト)の位置が変化し、モーター下部のスイベルブラケット(写真右の部分)に取り付けられたスラストピース(シャフトが実際に当たる部分で、交換できます。)がそのシャフトに当たることで取り付け角度が変わります。
スラストピースは、ナイロン製のものが標準ですが、宮島ではステンレス製のものを使用しています。




チルトアジャスタ

左から「-0.5/0/0.5/1/1.5」、
「0/0.5/1/1.5/2」、「0/0.5/1/2/3」
この3種類が宮島では用意されています。
つまり、宮島で使用できるのは -0.5/0/0.5/1/1.5/2/3 の全7種類です。
使用できる角度はレース場によって異なり、一番少ない戸田では -0.5/0/0.5 の3種類です。

左に書いたように、回転させることでも角度を変えられますが、そのプレートに使いたい角度がない場合は交換することになります。



 
ライナー取付位置

宮島ではかなり前に廃止されたため写真はありませんが、トップライナーとバックライナーの取付位置です。

写真の位置に物を挟むことで、モーターの取付位置が変わるわけです。
トップ(トランサム)の場合はチルトをはねた場合と同じ効果となり、バック上の場合はチルトを下げた場合と同じ効果となります。

なお、現在は琵琶湖と尼崎でバック上のみ使用されており、以前はバック下もありました。



スターンブラケット

ボートの内側です。ボートのトランサムを挟んで固定します。

締めるネジをサムスクリューと呼びます。

間にある垂直の板はトランサムニーと呼びます。









プロペラゲージ

アクリル製で、外形用(右写真)や表面用(上写真)など、1枚のプロペラに何種類も必要になります。



プロペラゲージ

このようにプロペラの穴に差して位置を合わせます。



 


ボートの繋留はモーターのステアリングバーを繋留装置に繋ぎます。

繋留装置のロックは、自動発艇装置により自動で解除され、また、左下のロープ(ボート右横まで伸びている)を引くことでも解除できます。


 


プロペラ

各モーターにはヤマト発動機製とナカシマプロペラ製の2枚が用意されていましたが、2013年11月よりヤマト製だけとなりました。

こちらはヤマト タイプS1-改です。

ボス部分(軸の部分)にはヤマト製を表す「y」をデザインしたものと「S1」の文字が入っており、縦書きで「17」とモーター番号を刻印してあります。



プロペラ

こちらはナカシマ マークNEW1S-改ですが、現在は使用されていません。

こちらのボス部分には「NAKASHIMA」の文字が入っており、ヤマト製とは違って寝かせた状態の横書きで「17」とモーター番号を刻印してあります。







プロペラ

プロペラは、シャーピン(穴の部分のピン)をプロペラシャフトに差し込んで取り付けます。
接触等があった際に、モーターが停止していないのにゆるゆると減速し、止まってしまうのは、このピンが折損し、空回りしているのです。(事故防止のため負荷がかかると空回りするようにしてあるのです。)



プロペラシャフト

矢印の穴にシャーピン(左写真参照)を差し込みます。
プロペラは、左のプロペラナットで締め、プロペラナットが緩まないよう割ピンで固定します。







ウォーターインテークと排気口(減音型)

冷却は水冷式となっていますが、その冷却水はキャリアボデー下部、排気口そばにある小さな穴(矢印)から取り入れます。

基本的には水がプロペラで押されることで中に入っていきますが、始動後はモーター内部が熱くなるため、その温度差でも吸い込まれていきます。

取り入れられた水はシリンダケースとエギゾーストフランジを通ってモーター本体を冷却し、ウォーターニップルより排出されますが、温水パイプ装着時は一部がキャブレタを暖めてから排出されます。
また、キャリアボデー内にも入り、排気ガスの温度を下げつつ排気ガスとともに排出されます。

現行のヤマト331型・321型を含め、減音型の排気口は2穴となっています。



ウォーターインテークと排気口(標準型)

以前使用されていた、標準型である302型では排気口は1穴です。

矢印がウォーターインテークです。





















大型吸気サイレンサ

現行のヤマト331型・321型のもので、キャブレタ部を覆っています。
従来の301型のFRPからポリプロピレンへと材質が変更され、大幅に軽くなっています。






大型吸気サイレンサ内部

吸気音削減のため、外気は上の小さい2つの穴から取り入れられ、奥の吸音室を経由してから中央の大きな穴よりキャブレタに取り込まれます。

騒音計測値としては、50mの距離で302型が84dB、301型が82dB、321型が80dB となっています。



減音型(ヤマト301型)用吸気サイレンサ

ヤマト331型・321型のものより小ぶりで、FRPで成形されています。
ワイヤーガードはありません。







標準型(ヤマト302型)用防水カバー

小型で、ポリプロピレン製で非常に軽いです。

写真右側に付いているアルミ製の部品はボーデンワイヤー(スロットルのピアノ線が中を通っている)の変形を防ぐワイヤーガードです。



減音型(301型)用吸気サイレンサ内部

内部の消音室もFRP製で、重量がかなり重くなっています。




標準型(302型)との比較

左が減音型用の吸気サイレンサ、右が標準型用の防水カバーです。
標準型用の中には何もありません。



製造銘板

この写真では見えにくいですが、ヤマト301型を表す「MODEL 301」で、「No.」が製造番号です。

この銘板はスイベルブラケット上部に貼られていましたが、ヤマト321型から廃止されました。











登録済み刻印

舵輪のマークが競走会のモーター登録刻印で、交換されることのないクランクケースに刻印されています。

選手に登録番号があるのと同様に、ボートやモーター、審判員、検査員にもそれぞれ登録番号があります。

左の数字は機関番号(製造番号)で、登録番号とは異なります。(登録番号はモーターには明示されません。)
登録番号は2017年9月現在、5300番台に突入したところです。(9999の次は0001になるようで実際には十数万機が登録されています。)


 


スタータロープ

水に沈むようおもりの付いたもの(左)
水に浮くもの(右)の2種類あります。

水に浮くタイプは浮遊物となる恐れがありますが、回収できるため環境には良いのです。

レース場によってどちらかを指定していたり、どちらでも使用可能だったりしますが、宮島では沈むタイプを指定しています。


 
   

モーター

モーター外観(ヤマト331型)

モーター外観(ヤマト321型)

モーター外観(ヤマト301型)

モーター外観(ヤマト302型)

モーター詳細PART1

モーター詳細PART2


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